スナオナシュキ

素直になりたい:30代男性(自営業)

10年分のラプソディを消費した夜

暑くて夜中に目が覚めてしまった。冷房と扇風機の駆け引きに負けた。
水を飲んで一息ついたら、もう一度扇風機をセットしようと思ったらふいに
 
「(ラプソディ…)」
 
頭に急に思い浮かんだ単語があった。
間違いない。
 
神の啓示だ。
 
すぐに理解した。ただ、ちょっと何言ってるかわからない。
ラプソディ?急にこの単語が頭から離れなくなった。寝ぼけていたのかもしれない。当初の予定通り扇風機のタイマーをかけて布団に横になった。
 
足の裏にあたる風が気持ちいい。
 
目を閉じた。
 
風の音だけが部屋に残った。
 
「…」
 
「(ラプソディ…)」
 
最悪だ。もう寝れない。
 
ラプソディが離れてくれない。
ラプソディ?なんだよそれ。
 
人よりは色々経験してきたと自負しているが、ラプソディと聞いて、明確な答えをすぐに出せるほどラプソディに恵まれた環境では生きてない。
 
つまりどういうことだろう?
 
世界は広い。自分の知らないことがまだまだ無限に存在するのに、何をのうのうと睡眠をとろうとしているのか。ラプソディについて答えられないお前は、人間にように睡眠をとることすら許される存在ではない。
神よ。そういうことか。じゃあ考えるしかないじゃないか!ラプソディについて。
 
時計を見ると3時30分を過ぎようとしている頃だった。
 
まずは、いきなり調べずに自分の中のラプソディを出し切ってしまおうと思った。間違えたラプソディの上に正しいラプソディを乗せても、古くて錆び付いた間違いラプソディが、新しくて肌艶の良い正しいラプソディを汚してしまうかもしれない。
 
腐ったラプソディの方程式だ。
それに通ずつものがある。
 
しばらく考えていたが、自分の中にあるラプソディは、ホームメイド家族というアーティストの曲しかなかった。今の今まで思い出すことはなかったが、ホームメイド家族という訳あり家族を連想させる飲み込みにくいバンド名と、軽々なラップ調のメロディーの思い出があふれんばかりに蘇ってきた。
 
確か、エウレカセブンの主題歌とかも歌ってた気がする。だから覚えているのだろう。
 
エウレカセブンは人生で何度か見返している数少ないアニメだ。最近はまたご無沙汰になっているが、全体的に使われるBGMが好きなアニメだった。
トラパーという、現実では手が届きそうで届かない空を自由に駆け回る設定とか、SFなのに登場人物の心理描写が細かく描かれているので、感情を揺さぶられる掛け合いが多いこととか、そういうところも好きだ。
何度見ても面白いと思う。
 
ただ、残念ながら曲自体の記憶は定かではない。ホームメイド家族はそのオープニングかエンディングかに使われていた気がする、という程度だった。
そして、もうラプソディについて思い出せる事象がない。
 
というわけで調べることにした。
 
検索「ラプソディ ホームメイド家族」
 
google「サンキュー!! アニメ BLEACH ED 2」
 
僕「…っ!?」
 
エウレカセブンじゃなかった。えっ、すごく恥ずかしい。もう二度とエウレカセブンの曲を褒めることはないだろう。
 
ブリーチのアニメとか全然見たことないし。何が起こっているのかわからない。若干のパニック状態だ。
 
冷静になって情報を整理すると、実際にエウレカセブンにホームメイド家族は楽曲を提供している。”少年ハート”という曲だ。それはラプソディは出てこないやつだった。
正直な所、なぜ混ざっちゃったのかはわからなかったが、ブリーチみたいなオシャレなアニメに使われてるならラプソディも満足していると思う。それは間違いない。
ただ、このままだと悔しいので、エウレカセブンの方のホームメイド家族もしっかり聴いた。何回か聴いた。
 
すると、どうだろう。
 
もうラプソディって言っててもおかしくない。ところどころにラプソディが散りばめられたメロディーだった。
そもそも、ラプソディというのはホームメイド家族のような音楽のことを言うのでなないか?おしゃれでノリが良く、一体感がある。
常に語尾にラプソディを添えてもなんら違和感がない。そういうことなのかもしれない。
 
もっと言えば、神はラプソディというフィルターを通して、”家族”の大切さと今一度向き合う機会を与えてくださったのかもしれない。
 
僕はそっと目を閉じた。
 
風の音だけが部屋に残った。
 
ここまで考えたところで、僕はラプソディについて考えることをやめた。
 
そう、理由は考えるまでもない。
 
眠いからだ。
 
時計を見ると5時30分を過ぎようとしている頃だった。