スナオナシュキ

素直になりたい:30代男性(自営業)

スター選手の隣にいる奴の気持ち

もしも、僕がドラクエのモンスターとして生まれ変わったら、メタル系のモンスターとは絶対に一緒に登場したくない。
 
理由は一つ、メタル系のモンスターのスター性による嫉妬だ。
 
綿密に計算された出現確率。元祖レアモンスター。レアモンスター界のレジェンドと言える。
 
僕が初めてドラクエをプレイしたのは、小学校の低学年ぐらいだったと思う。冒険の途中で不意に出現するメタルスライム。一気に動悸が激しくなるのは今でも変わらない。
ハッハッハッと呼吸が荒くなり、口の筋肉を伝える電子信号は途絶え、だらしなく口を開けよだれを撒き散らす。犬には骨、猫にマタタビ、人にメタルである。
 
どんなに”ガンガンいこうぜ!”とテンションを上げていても、”みんながんばれ!”と仲間意識を高く友情を大切にしているときでも、
 
「めいれいさせろ」と叫んでしまう。
 
それがメタルスライムなのだ。
 
序盤のヘビーローテ魔法のギラ。すごくたくさんの場面で助けてもらったよね。魔法使いの仲間には足向けて寝れねぇや、と誓ったあの宿屋。そんなギラをメタルスライムに使った瞬間、魔法使いを見る目はゴミへと変貌する。魔法に感謝したあの日はなかったことになる。
 
だから命令してしまうんだ。今は個性を出すな。言われた通り動け、と。
 
ヒトすら変えてしまう。それほどのスター性を持ったモンスター。それは、今も昔も変わらない。だが、大人になったからだろうか。メタルスライムとの戦闘が終わった時にふと我に返って疑問が浮かんだ。
 
「あれ?一緒に出てきたモンスターなんだったっけ?」と。
 
全然思い出せない。こんなに寂しいことあるのだろうか?人はいつ死ぬかの問いに、忘れられた時と答えた学者がるように、忘れられることほど寂しいことはない。
 
例えば一緒に出てきたモンスターがサボテンボールだとしよう。
 
こんな奴だ。
 

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まだトゲが柔らかく、父の大きな背中に隠れながら育った幼少時代。
 
食べ盛りになり、「あんたたち食べるときの口がそっくり」と優秀な兄と比較され一緒に笑いあった団欒の日々。
 
「麻痺の時はこんな顔をするのよ」と愛する母に教えられた、あの夏の日。
 

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後で知ったことだが、母の麻痺顔は地元ではかなり有名だった。外を歩けば、周りから母の麻痺顔を褒められることが多く、それが嬉しくもあり、小さいながらも嫉妬していた。自分だったら、もっとすごい麻痺顔が出来るはずだと。しかし友達に言っても信じてもらえなかった。
 
兄と修行に出かけた洞窟の奥。辛い修行の日々が続いた。それでも、修行のあとの麻痺顔の練習は忘れることはなかった。途中で修行をサボる兄をとやかく言うつもりはなかった。自分は自分のできることをする。来る日も来る日もそれだけだった。
 
ある日、母に麻痺顔を見てもらった。駄目元でふと見てもらおうかな、と思った程度だった。修行中ではあったが、努力の方向性の確認のために見てもらおうと思ったのだ。
 

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この日から、「神童」と呼ばれるようになった。
 
父は言った。「神童と呼ばれた子は皆、不運な運命をたどる」と。
 
この頃になると、父が働いていないただの寄生虫だということに気づいていたので、無視した。
 
それからの日々、常に自分を高めるためだけに時間を費やした。すべては勇者に倒され経験値という血と肉になるための魔物道。いつ現れるかわからない勇者をひたすら待ち続ける。だから、運命の日というのは突然迎えることにはなる。
 
いつも通り起床し、身支度を済ませて砂漠へ出かけた。日課をこなしながら、そろそろ昼食を摂ろうとした時だった。
 
 
なんと!勇者が襲ってきたッッ!
 
 

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油断していたとはいえ、それにしてもいきなりである。さすがに、背後から斬りつけられるとは思わなかった。だが、それほど自分のことを警戒していたということ。晴れ舞台には丁度良いだろう。
 
はじめて気がついたが、隣にはいつの間にかメタルスライムがいた。
 
振り返り、意気揚々と戦闘態勢に入ったが、なぜか勇者一行の様子がおかしい。
 
彼らはまっっったくもってこっちを見なかった。目も合わせてくれなかった。「あれ?おかしいな」とは思いつつも平常心を保ちナチュラルな動きに徹した。
 
右へ左へステップを踏み、揺れる。

 

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我ながら、なんて自然なサボテンボールだと思った。自分では、もうサボテンになってしまったのではないかと不安になってしまうほどだった。たぶん、勇者一行が攻撃してこないのは、そのせいなのだろう。
 
彼らがギラついた目を向けるのは銀色に輝く、隣のあいつ。
 
 

ナチュラルな僕とメタルなアイツ)
 
 
 
一世一代の晴れ舞台にポエミーなフレーズを考えてしまった自分の冷静さに、神童と呼ばれただけはあるなと自画自賛する。一曲作っても良いかもしれない。

あ、自分カッコよすぎる…。
 

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おっと、思わず麻痺じゃないのに麻痺顔になってしまうところだったが、なんとか気を引き締めて通常の表情に戻す。能ある鷹は爪を隠すってね!
 
すぐに表情を戻す。
 

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隣から地面が揺れるほどの轟音が鳴り響いた。噂に聞く、「かいしんのいちげき」というやつだろう。
 
そして、ついに勇者一行がメタルスライムを倒した!
 
 
次は自分の番だった。
ついに一世一代の見せ場がやってきたのである。
 
 
 
 
 
 
さぁ、ここで思い出していただきたい。
メタルスライムを倒し、残りのモンスターを倒すときの気持ちを。
 
 
 
思い出しましたか?
 
 
 
そうなんです。
 
そのときの気持ちは「無」なんですね。一刻も早くこの戦闘を終え、経験値を目で見たいのです。さっさとレベルアップの音を聞きたいのです。残りのモンスターのカスみたいな経験値はどうでもいいのです。
 
 
 
一緒にでてきたあいつ、覚えていますか?
 
 
 

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だから、僕はドラクエのモンスターとして生まれ変わったら、メタル系のモンスターとは一緒に登場したくない。
 
(※先にメタルスライムが逃げた場合も悲惨です。テンション低いまま惰性で殺されるだけだから)