スナオナシュキ

素直になりたい:30代男性(自営業)

「人生は一度きり」という悪魔の囁き

だいたい20年くらい生きた辺りで、「人生は一度きりなんだから。やりたいことやろうよ!」的なマインドに出会うんじゃなかろうか。
 
そういうマインドを広めている人は往々にして、楽天家でよくしゃべり、元気である。そして「何とかなるから!とりあえずやったらいいんだよ!」と無責任な言葉を誰よりも大きい声で放つ。極め付けに ”人脈”というワードをやたら使い始めたら、いよいよもって信用できない。
 
という人の話は置いといて、「人生は一度きり」という話。
 
僕も初めて人生にやり直しはないんだよなぁ、と気付いた時はすごく戸惑った。もう少し自分の本当にやりたいことを探してみようかな、と一人旅に出た。よくある話だ。それでも10代だった当時は珍しいと言われたもんだ。
 
何の宛てもなく、コンパスだけ持って自宅から歩き出した。昔、中国の偉いのかエロいのかどつちか分からない坊さんが、とにかく西を目指して歩いていたことを思い出して、僕もとにかく西を目指した。途中、猿にも豚にも河童にも、誰にも会わなかった。むしろ、撮った写真には、一つの生命体も写ってなかったので、すべて消した。ビルとか、川とか、木とか、そんな写真見返してもトキメかなかった。こんまりの断捨離術は思い出にも効く。
 
出発は僕の育った練馬にした。ひたすら西を目指し、立川付近まで歩き続けて、辺りは真っ暗になり雨が降りだしてきた。
 
もう、この頃には今自分がしている旅が驚くほどつまらないんじゃないか?ということは、何度も脳内会議の議題に上がったし、今すぐにでも辞めてもいいんじゃないか?という多数決を取ったりもした。
 
でも、僕はやめなかった。
 
なぜなら、雨が止むようにお祈りした神社で、磁場の影響なのかコンパスがずっとクルクル回りだし、どこに向かえば良いかわからなくなったからだ。本当は辞めたかったのに辞められなかったのだ。持ち物は少しのお金とコンパスとデジカメだけだったので、どうしようもなかった。なんとか明るい方を目指したり、人を見つければその後ろを尾行した。この瞬間だけは、自分探しではなく他人探しだった。
 
一軒のファミレスにたどり着いた。僕は、そこでドリンクバーを頼み、夜が明けるのを待った。
 
ファミレスの机は寝心地が悪く、夜通し考え事をしていた。議題はもちろん、この旅は驚くほどつまらないんじゃないか?ということについてだ。
 
一日中歩き続けて、膝はボロボロだし、人と話した記憶といえば「ドリンクバーひとつ」というセリフのみだった。旅に出る前は、どんな出会いがあり、どんな発見があり、困難があり、想像するだけでワクワクした。それを乗り越えた経験を糧に一回り成長した自分になろうと、意識も高くテンションもあがる一方だった。
 
それがどうだろう?
 
出会いもなければ発見もない、言葉もなければ生命体すら映らない。一回だけ公園の子供の笑顔を撮ろうとして、母親に交渉して断られた。
 
心は打ちのめされ、雨にも打たれ、膝もガクガクして寝不足で、コンタクトで目がシパシパしてしょうがない。ファミレスの店員には迷惑な顔をされ、逃げるようにして店を出た。
 
外は快晴だった。もし、雨だったら涙を隠すように上を向いて泣いていたかもしれない。
 
外は快晴だったッッ!
 
この、「晴れ」というパワーのなんたることか。僕は人の流れを見ながら歩き出し、立川の駅に着いて予想外の行動に出た。
 
100円均一でコンパスを買い、また西を目指したのだッ!
 
すごい快晴パワーッ!
 
あんなに恋しかった駅を背に、また歩き出した。こうなったら、何かを掴むまで進んでやると決めた。相変わらず人には会わず、会話もなかったが進む脚に迷いはなかった。グングン進む。
 
そして、なんと東京の最西端ともいえる奥多摩に着いた頃!
 
僕の両膝は想像以上の崩壊状態になり、駅員に解放されながら電車に乗り、帰宅した。
 
いや、ホントすいません。
 
あの時はマジ迷惑かけました。
 
こんなことになりたくなければ、言葉に影響されて旅なんてでない方がいい。僕は自分の経験を生かして、一人でも多くの自分探し旅人を救いたい。
 
本当は、この人生は一度きりというテーマでは違うことを語りたかったが、なぜかじぶんがやったリアル西遊記を思い出しちゃって、止まらなかった。
 
もう一度同じテーマで記事書こうっと。